2011-01-01から1年間の記事一覧

南三条交番3

頼りになる兄貴みたいな存在だったが、初夏のある日、突然いなくなった。そういうヤツは、何人もいて「軍人」になったと囁かれた。サークルで話題にするのもはばかられる雰囲気があり、家の事情により遠くで働かざるを得なくなったとだけ、古参の部員から知…

南三条交番2

佐々木剛の顔と名前を見るのは40年振りだった。 「1970年から40年も逃げているのか」 自分のつぶやきに驚いていた。殺人未遂、放火などの罪が大書してあるお尋ね書きには、何処となく頼りなさげで、ボンヤリとした彼の顔が二つあり、まるで整形手術後の使用…

南三条交番

その周辺の雪は、例年になく積もって、足を取られながら、杉山は歩いた。年が明けて集中的に降った雪。南三条交番の周りもやったよ。連日降り注いだ雪の量に除雪が付いていかないのだ。 小学校や交番は閑静な住宅街ならぬ、都心部のエアポケットのような統一…

子女たちの絆

付属の女子中学生たちが英語の話をしていた。すべての思考を英語で表現できるすごい男の子がいて子女たちのエスパーなのだ。 「あのコはほんとにすごいよ」 「帰国子女でしょ」 「英語だけじゃなく何カ国語もできるのよ」 「それより話の中身があるもん」 「…

サエはすっかり落ちぶれた。

まだ19歳だというのに。 「サエどうしたって?」 「学校辞めたらしいよ」 「えっ、ホントに」 「彼氏とはまだ続いてるんだ」 「わかれた」 「いま違うのと付き合ってる」 「だれよ」 「定食屋の店長さ」 「バイト先のかい」 「そいつ33歳なんだよ」 「えっ、…

恋の魚

有名女優の12年ぶりの主演が評判になった映画を見ていたら、急に馬鹿らしくなった。でも彼女、魚のことを思い出させるきっかけをもらった。 逢った瞬間、惹かれたが、最初から別れる運命にあった。それなのにのめり込んで、傷つけあい、互いに逃げた。 あの…

しゃれ娘

彼女のことを言う前に母のことに触れたい。母はしゃれ娘の母のことで、地味で几帳面な30代の主婦である。化粧気がまったくなく、お世辞にもおしゃれとは言えない。美人ではないが、決してブスではない。 それに比べると、娘はおしゃれで、小学生のくせに、花…

笑う男と総ナメの女

近頃一人勝ちする現象がビジネスだけでなく、芸能界にも広がっているらしい。各賞総ナメの女優とか歌手とかよく耳にする。 トシコもその一人で、その年の主演女優賞を総ナメにした年増の女が出ている映画を見ていた。全く共感できない生き方を感じて「うざっ…

ホスト経験あり3

イケメン男は、低い声で話し続けるのをやめようとしない。そのリズムは、抑揚が少なく不愉快なものだった。 回りのことに飽きるとしだいにモノローグになっていく。自己言及的な言辞ほどスキャンダル耳をくすぐるものはない。 「橋下なんて口先ばっかりでさ…

ホスト経験あり2

男は、車両の入り口付近で固まっている高校生に苛立ち始めた。女子高生の甲高い笑い声や奇声を発する様子が我慢ならないようだった。 「うるせーな、あいつら」 「高校生だよ」 「何がおかしいんだ」 「ちょっとアンタたち、うるさいよ」 「オレが高校の時な…

ホスト経験あり

デブで茶髪の女を連れてJRに乗った男は、韓流スターのようにかっこ良さを辺りに振りまいていた。 彼をまともに見る人はなく、浮き上がっていた。女性らは、キミ悪がって明らかにそのカップルを避けていた。 そこで、男はしゃべり出した。「オバンでギャル…

ファイティング原田(ハラタ)

アカナラの並木道を早足で駆け抜ける。原田には戦う理由があった。後輩の杉山をエステに紹介したのは自分だ。嫌なら止めればいいのに通勤を続けている。 そして誰かれかまわずグチを言いまくっている。直接聞かなくたって悪いことは耳に入ってくる。 「その…

マーケティングの勝利

彼女たちは男との別れ方について熱心に討論していた。「いきなり路上で別れるってしゃべるオトコってどうよ」「サイテー」 中心のカノジョは、手元の本が開きっぱなしになっており、就活のためのビジネス教養本の中身が丸見えだった。マーケティングとは何か…

スモウ嫌い

朝いつも見かけるクチャ、モンキー、ローズ。愉快な仲間たち。クチャは、髪の毛くちゃくちゃの頭。どことなくだらしない感じ。モンキーは昔のアイビー風にキメ、ルパン3世にそっくり。ローズは眉毛を剃り、ピンクの花びらをあしらったピアスを刺している。ク…

ユウちゃんの話 わがままYOU

確かに私は聞いた。ユウちゃんがユウスケかユウコか、あるいはまたただのYOUなのかわからなかったが。 「ユウちゃんなら全くわからん。この間電話くれっていうからしたら全然出ないの」 「ああ、そんなのいつもだよ。四人でメシ食ったの。当然ワリカンと思っ…

モノローグ杉山

「宮田クン、オモシロイ」 さっきから杉山はそう連発するのだ。高3の時から1年ぶりで会った。JRの改札口で偶然に。宮田は学生、杉山はフリーターみたいなもの。杉山はあってはならないサギだと思っている。エステ関係の仕事なのだが、見習いだからあまり店に…

ハゲの弾よけ

JRに乗っていたら隣のオヤジが邪魔になった。肘を広げて本を読むオヤジの圧力で右腕が痛くなった。オヤジの体格は良く、きれいにハゲ上がった頭のてっぺんから革靴のつま先まで強固な鎧で覆われていた。まるで時代劇に出てくる古武士のように。りっぱな存…

ブログを始めました。

ずっと昔にwebを作って遊んでましたが、ある時に遠ざかり、挫折しました。ブログにも興味があったのですが、やり方を覚えることができず、ほっかたらかしていました。ある日、突然ツイッターを始めたましたが、なかなか活性化せず、困ったと思っていたところ…