スモウ嫌い

 朝いつも見かけるクチャ、モンキー、ローズ。愉快な仲間たち。クチャは、髪の毛くちゃくちゃの頭。どことなくだらしない感じ。モンキーは昔のアイビー風にキメ、ルパン3世にそっくり。ローズは眉毛を剃り、ピンクの花びらをあしらったピアスを刺している。クチャとローズは、黒っぽいスーツに革靴、手提げカバンの通勤スタイルだが、フツーのリーマンでないことは確かだ。モンキーも横文字虚業関係者に違いない。頭のテッペンからつま先までキメてる趣味の良さはむしろ滑稽ですらある。彼らに共通しているのは、スモウ嫌い。スモウ嫌いな愉快な仲間たち。
 ある日、ローズは後輩のカップルをJRの車内でつかまえて人生を語っていた。
「おまえらつき合ってるのか」「高2に言ってもわからんかもしれんな」と、高校卒業と同時に家を出て住所不定になってから彼女の実家に転がり込んで肩身の狭い思いをしている境遇を切々と語るのだった。彼女の両親がすごくうるさいこと。ちょっと帰宅が遅れるだけで30分以上説教されること。食事は全部外食で済ませているのに、転がり込んだ義理があるので月7万は金を入れていること。オヤジさんの稼ぎが悪く、おまけにキャバクラ通いがひどいため夫婦仲は常に険悪でいつそのとばっちりがくるか予測がつかないこと。最初は彼女との同居は楽しかったが、そのうちセックスにも飽きてきてつまらないこと。自分の仕事が営業なので、両親はやめろと言われること。家を回って新聞を取ってもらう仕事だが、イメージが良くないこと。人から嫌われる仕事かもしれないが、月20万〜50万は稼いでいること。
 そのとき携帯が鳴って彼女の一言にローズは切れそうになる。
「おい、JRに乗ってんだよ。ここでブチ切れさせんのか。やめとけよ。親のコト持ち出すの。後でオマエがつらくなるんだぞ。切るからな」
 彼女が何を言ったのかは不明だ。しかし、ローズは今夜も家で食事を用意している彼女をセッカンするのだった。なぜそうするかはわからないが、そうなってしまう。DVのドツボにはまってしまったローズであった。
 新聞の営業をしていると、いろいろなモノを売ることが可能だ。なんか高いもの売りつけようかなと将来を考えるローズであった。

 クチャの様子がヘンだ。少し短めにまとめていた髪の毛をクチャクチャにしている。トレードマークのウランちゃんのように両耳の所でカールした髪も乱れていた。クチャも再びケモノ道を歩きだしたのかもしれない。

 モンキーはなんと生保のヒトであることが判明した。と言っても彼が朝、姿を消したビルが単に生保のビルだっただけに過ぎないが…。