2013-01-01から1年間の記事一覧

モッくんの彼女2

「美人とか、ブスとか関係ないよ。モッくんに彼女ができた、そのショックに比べればなんでもないって」 「嫉妬かい、アンタ」 「可愛がっていたペットに逃げられた気分ね」 彼女付きのモッくんになってしまったモッくんは、とても遠く、クールだった。マリと…

モッくんの彼女1

あのモッくんに彼女ができてマリは驚いた。すぐにサヤに教えようとしてメールしかけてスマホを閉じた。明日JRで会うからその時直接話したくなった。 マリは、サヤといっしょにモッくんを弄って大笑いしたことを思い出した。JRで通学している間、モッくんはペ…

ガニコとマチ子、ヨシコ

三人の女が気になり出してかなり経った。ガニコは、相変わらずすらっと脚を強調しながらガニ股の角度を広角に広げていた。マチ子ちゃんは、落ち着きはらい、ふくよかさをたたえている。ヨシコは、隙のないファッションで、着飾っていた。ガニコは、しっかり…

ガニ子と玉子

毎朝見かけた玉子に代わってガニ子がホームに現れた。彼女は、いわゆる独身OLなのだが、バンツをはくことはなく、スカート派だった。背は高く足はすらっと伸びていたが、ガニ股で纏足の中国女のようにトンガっていた。バッグと袋を持ち、腕を組んで歩く彼女…

JR十人斬り

混み合う改札口を抜けると、男は払い戻しの客を誘導していたJR駅員に「テンチュー!」と言いながら斬りかかった。二本線の入った帽子を被った駅員はその場に倒れた。助けようとして近寄ってきた年輩の偉そうな駅員には、ダンビラではなく、素早い挙手を二…

比率ではなく、実数で見ること

ある本を読んでとてもためになった言葉。 昔見た勝新太郎、田村高広主演の映画『兵隊ヤクザ』を思い出した。若い士官候補の横暴に田村が「軍隊はな、メンコの数(階級)じゃねぇんだ。てめぇ軍隊入って何年だ」 軍隊では私闘は禁止されている。やれば即営倉…

もう一つの黙示録3

OL相手のグル・インでは、「役人様々で、うちの人間なんかへいこらしてますよ」「電力会社なんて役所に近いよね」「うちの取引先の社長、電力会社から勧められてオール電化にしたら奥さんから離婚話だってさ、かわいそう」「原発は絶対嫌。電気は必要だけ…

もう一つの黙示録2

その後、電力会社の仕事が広告代理店を通じて入ってきた。結局、なんだかんだ言っても、民生用の200ボルト需要が知りたいというのは、一つの大義名分であって本当は原子力発電に対する意見を知りたいのは、火を見るより明らかだった。すなわち、企業イメージ…

もう一つの黙示録

原子力について聞かれた私は、正直に答えた。あんな危険な技術はダメだと。会社の専務は驚き、では電気が供給できなくなってもいいのか、と正してくる。へえー、そうですか。そんなこと考えたこともないこちらは、すっかり恐れ入ったフリをして切り抜けよう…

黙示録3

講師は完全に生き絶え、ミンチ状態に近かった。男たちは「こういう場合は、いつも殴り殺しだ」と口々に語った。名誉が守られたことに安堵していた。村の役人や組合の職員は、すでに知らぬ顔を決めて姿を消していた。車も運転手もいなかった。マキリの男は、…

黙示録2

男は、さきほどの善良な妻の夫だった。何も言わずマキリで講師のノドをかき切った。動脈が切れて大量の血が噴き出した。それにしてもみごとな切味で、その両刃の小刀は、後々村の男たちの語り草となった。 惨劇の現場に村びとが集まってきた。男たちが前に出…

黙示録1

一人のコンサルタントが村に招かれて為になる話をすることになった。漁業を生業にする村で、組合の記念日だった。コンサルの中年男は、集まった漁師と妻たちを前に「この世で一番大切なものは何ですか」と尋ねた。意味が呑み込めず黙っている村人に、詰問調…

鳴海突撃隊3

ところが、官僚たちは、それを許さない。誰が俺たちの存在に余計な注目をむけたのか。不思議だった。党中央自体がスパイだらけで、まだかろうじて生き残った下部組織をあぶり出そうと罠をかけてくる可能性だって十分ある。 誰なんだ、俺を呼び出したのは。相…

鳴海突撃隊2

警察の目をくぐって破壊工作するのには、ほとほと疲れ果てていた。もともと偵察隊に過ぎなかった鳴海隊が破壊工作や戦闘をともなう行動に回ったのは、ひとえに戦力の喪失の結果による。 本来の戦闘部隊は、あの攻勢以来の冒険主義的な作戦、すなわち連続的な…

鳴海突撃隊1

幾度かの危機をかろうじて乗り切り、生き残った部隊の面々は少なくなっていた。この辺で止めないと全滅するだろう。ナルミは、相変わらずの指令を受け、その苛酷さを恨んでいた。 「これを最後に部隊を解散させてほしい」と連絡員に伝えた。 すぐに官僚が飛…

南三条交番4

「古葉さん、学校に戻るんですか?」 佐々木のペンネームは、古葉であり、出身地の野球監督からとったものだ。 「いいや、ちょっとみんなの顔見に寄っただけさ」 そう言う佐々木の顔は、さみし気で、 こちらが辛くなった。 それを最後に会っていない。都心の…