南三条交番

 その周辺の雪は、例年になく積もって、足を取られながら、杉山は歩いた。年が明けて集中的に降った雪。南三条交番の周りもやったよ。連日降り注いだ雪の量に除雪が付いていかないのだ。
 小学校や交番は閑静な住宅街ならぬ、都心部のエアポケットのような統一のない景色に溶け込んでいる。ドーナッツ現象が進み、虫食い状態になった街並はモノクロームで、雪景色と一体化して輪郭が薄れている。
 何も頭になく、歩きにくい足元に集中していた。気を許すと天と地がひっくり返り、痛い目に遭うのだ。
 平地と区別が付きにくいダウンヒルを何とかやり過ごして少しだけ頭をあげた。もうちょっとで信号があるはずだった。視線がズレて斜めにある奇妙な色彩の小屋を捉えると、赤い窓からこちらを見ている男が目に入った。
 瞬間逸らそうとしたが、粘りつく視線に再び引き寄せられた。男ははっきりこちらを見ていた。濁って鈍重な目は、一見何も見ていないようだが、決して逃がさないのだ。獲物を捉える他には、反応しない穴。ぞっとさせる機械仕掛けの。冷たく、それでいて、ねちっこい。低温融解してドロドロの金属の穴が開いていた。
 捕捉されたまま、表に出ると、掲示板があって過激派、事件当時、22歳、かっこ現在61歳とあった。