南三条交番4

「古葉さん、学校に戻るんですか?」
 佐々木のペンネームは、古葉であり、出身地の野球監督からとったものだ。
「いいや、ちょっとみんなの顔見に寄っただけさ」
 そう言う佐々木の顔は、さみし気で、 こちらが辛くなった。
 それを最後に会っていない。都心の交番を襲い、警官が焼死した事件で追われているのを知ったのは、もう秋だった。コンクリートを焦がすような熱は冷め、街からきな臭さは消えていた。季節の変化は早く、時代は勝手に移ろっていった。
 そんなシーンが記憶の底から甦ってきたが、立ち止まらず目から逃れようと立ち去った。