比率ではなく、実数で見ること

 ある本を読んでとてもためになった言葉。
 昔見た勝新太郎、田村高広主演の映画『兵隊ヤクザ』を思い出した。若い士官候補の横暴に田村が「軍隊はな、メンコの数(階級)じゃねぇんだ。てめぇ軍隊入って何年だ」
 軍隊では私闘は禁止されている。やれば即営倉にぶち込まれる。だから、殴り合いには上官の許可がいる。手続きを踏めば何でも許されるのが軍隊だ。
 意味不明になってきたが、言わんとするのは、軍隊では階級が一つ違うと天地の差があり、年功序列が幅を利かせ、古参兵が新兵をどんどんなぐる。だが、大宮二等兵を守ろうと、有田上等兵は、階級が上の士官候補生にこうぜんと言い放つ。
「お前、軍隊の飯食って何年になる。オレは、4年満期除隊目前の3年兵だ」
 相手は、有田の言い草に面食らって「それに何の意味がある。オレも3年兵で階級は軍曹だ。大宮二等兵の制裁に逆らうのか」
「違う。お前は幹候上がりの2年兵だよ。いいか、軍隊はな、メンコの数じゃねぇ。3年兵のオレが言うんだ。これは、制裁ではない。お前はビンタでなく、拳でなぐった。よって制裁ではなく、決闘だ」
「大宮、やれ。殴り返しもいい。徹底的にこいつに軍隊を教えてやれ。ただし、殺すなよ」
 大宮は、相手を半殺しにするわけだが、この話は軍隊という社会の縮図を象徴している。
比率ではなく実数で見ることとは関係がない。それがはっきりした。