en-taxi 休刊までの13年、46冊を想う


創刊号と休刊号

 ずっと読んでいた雑誌がなくなるのはちょっと寂しい。扶桑社の季刊文芸誌(最近は不定期だったが)『en-taxi』がこの11月で13年、46冊の軌跡を残して休刊した。2003〜2015年、1〜46号の総目次が文庫付録で見ることができる。
 2003年3月の創刊号は、表紙がピンクに黒のロゴがどんと載っていてけばけばしい感じ。en-taxiは「タクシー・で」という意味で、超世代文芸クオリティマガジンというコピーもある。
 のちにベストセラーとなったリリー・フランキーの「東京タワー」の連載が始まり、雑多な文章と企画がごちゃごちゃと詰め込まれ、街の雑踏とか歓楽街の猥雑さに通じる。そして正統派の文芸や文壇にも敬意を表しつつという印象である。
 それが46冊目になると、巻頭の重松清「このひとについての一万六千字」を定番とし、座談会、対談、小説、エッセイ、コラムなどが並ぶ。座談会や対談は創刊号から変わらない面白さを保っている。
 この雑誌をどんな人が読んでいたのか想像すると楽しい。連載ものでは絓 秀実や吉田司の時評はよく読んでいた記憶がある。
 中山康樹の連載「五感の採譜録」でロックやジャズの歴史やエピソードを楽しく読み、特に「マイルスの夏」のシリーズには熱中した。その中山も今年1月には鬼籍に入った。