2015 今年読んだ人文系3冊

 久々にブログを書きます。2015年、今年読んだ人文系のベスト3は、全部新書になってしまった。

1 生きて帰ってきた男(岩波新書小熊英二
 父親の戦争および戦後の体験を聞き書きしたオーラルヒストリー。過酷なシベリア抑留から「生きて帰ってきた男」が語る戦後史は、庶民の政治観や社会観が率直に語られ、実に生き生きと歴史を紡ぐ。誰もがこんな風に自分も生前の父と語り合い「歴史的な和解」をしたいと思わせる。世代を超える戦後史でもある。


2 戦後入門(ちくま新書加藤典洋
 終わらない戦後にさよならする手立てを世に問うてきた著者が普遍的な平和主義に基づく憲法9条の書き換え(改憲)を具体的に提案する。交戦権を国連に委譲し、非核条項と基地撤廃条項を加えることで「対米従属」から独立を獲得する。この論考を通じて戦後の真実を知り、きちんと決別できる論理の道筋が見えてくる。


3 日本人が知らない漁業の大問題(新潮新書)佐野雅昭
 世の水産物に対する関心は高いが、「業界の常識は世間の非常識」らしい。生産現場を知る漁業経済学者が魚の「常識」に関する正論を説く。「マグロやウナギ」よりもっと重大な危機が存在すると指摘し、漁業権や輸出、漁協、養殖、流通などにまつわる誤解、曲解に歯に衣着せぬ語り口で反論し、魚食のあるべき姿を示す。