変わった映画 南部軍・ウィズネイルと僕

 札幌駅北口の蠍座で『南部軍』という映画を見た。サブタイトルに「愛と幻想のパルチザン」とある。韓国映画きっての社会派と呼ばれるチョン・ジヨンが監督した1990年の韓国映画、157分という長尺。朝鮮戦争前後に韓国南部でパルチザン闘争を展開した伝説の南部軍の栄光と最後を描く。新聞記者から部隊に編入され、餓えと寒さの極限状態で全滅した南部軍の生き残りが証言する歴史の真実を映像化した。
 南部軍は共産パルチザンだが、韓国軍はもとより、米国の仁川上陸作戦で敗走した朝鮮人民軍からも独立した存在で、南に掃討され、北からは見捨てられた。南朝鮮労働党の幹部、 李鉉相に率いられた南部軍は、朝鮮半島ではタブーであり、南北に分断された朝鮮半島、その固定化された現状、共産主義運動の光と影を考えさせられる。
 日本との関係で言えば、赤軍派の問題に固執し、『実録・連合赤軍』をつくった若松孝二監督との類似を思わせるが、より社会的背景が明確でスケールが大きさを感じさせ、戦争映画としても楽しめる作品。
 もう一本変わった映画として『ウィズネイルと僕』を見た。ブルース・ロビンソン監督の自伝的な要素が色濃い1987年英国作品。60年代終わりの時代の雰囲気を二人の俳優志願の若者を主人公に描く。ビートルズジョージ・ハリソンがプロデューサーを務め、ドラッグ(マリファナなど)とロック、田舎と都市の生活の対比などを背景に、若者の意味のない会話がとりとめもなく繰り広げられる。ジミ・ヘンドリックスの「ワッチタワー」「ブードゥーチャイル」が浪費される青春、焦燥感を抱く若者の心を切り裂き、映像効果を盛り上げる。ウィズネイルと僕は結局、僕に来た出演のオファーを契機に共同生活を解消し、僕は旅立つが、どこに向かうかは定かでなく、60年代が終わり、70年代が始まるという喪失感がこみ上げてくる。