札幌駅北口周辺 広場と地下とお店

 商業的な付加価値がないため、空間の美しさが一層引き立つものが確かにある。例えば、札幌駅北口の地下歩行空間がそれ。収容台数230台の駐車場を囲む広い通路は、昼間でも夜間でも人通りは少なく、人工的につくられた巨大な空間を構成している。多様な顔を持ち、現代美術の造型、近未来的な雰囲気、休むための座る場所を提供する。実に不思議な場所なのだが、機能はほとんど通路でしかなく、店舗や展示など商業的な機能はない。つまり、殺風景で、一人歩きはちょっと怖い感じもする場所でもある。もっとも都市伝説の一つかもしれないが、この歩行空間が結ぶ札幌第一合同庁舎には国の出先機関が集積されているため、「核シェルター」という噂が以前からある。
 地元紙によると「札幌駅北口の地下通路は地下駐車場の四方を囲むようにあり、全長は四辺の合計で480メートル。札幌市が国の補助を得て総工費計260億円をかけ、地上の広場、地下駐車場と共に建設。1998年に完成した」(北海道新聞2007年12月20日)。
 地上には、虹をイメージしたオブジェと噴水。超高層ビル。ちょっと先に行くと、個性的なミニシアター。満艦飾の居酒屋。
 再びに地下に戻って、天窓からの光と音楽的なオブジェ、金属の構造物を楽しむ。ここにはホームレスらしき人もいたが、それほどめだつわけではなく、ただまばらな人が通り過ぎていくだけなのだ。地上にも賑わいがあるわけではないが、地下の寂しさは格別で、その対比がこの辺一体の奇妙さ、面白さを際だたせる。