冬のR港

 重いS港というタイトルの小説があった。S港というのは長崎県佐世保港だ。軍港であり、背後に朝鮮戦争や米軍の存在があったと思う。井上光晴はとてもムードをもった作家で、かなり偽りもあったらしいが、自分の世界をつくり上げ成りきることに美学をもっていた。
 R港は、北の植民地の西部にあり日本海に面している。ここは国際貿易港で、昔は内陸の石炭、木材の積み出し港として発展したが、今は木材や石炭、原油などの輸入の方が多い。寂れた港町は冬の寒々しさの中で、一層鈍い色の海を沈み込ませる。R港というのは北海道留萌だ。物流を支えた運河のなごり。そこは最も深奥部に抉られた嘴のような切り口なのだ。